SWARRRM「こわれはじめる」
SWARRRM「こわれはじめる」(2018)
★1. ここは悩む場所じゃない - This is not the place to have a dilemma
2. 遠く はかなく - Far away and ephemeral
★3. 愛のうた - Song for love
★4. 首輪しゃぶってな - Suck your collar
5. 明日に歌え - Sing for tomorrow
★6. 影 - Shadow
7. 夢から - From my dream
8. マーチ - March
9. 血が叫ぶ - Crying of my blood
10. 瞬き - Blink
11. 自由 - Freedom
12. 絆 - Ties
★13. あなたにだかれ こわれはじめる - Beginning to break after you hold me
3LA(公式通販)
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「CHAOS&GRIND」をコンセプトに掲げるグラインドコアバンド、SWARRRMの5thアルバムにして最新作。
グラインドコアやハードコア界隈から絶賛されるのみならず、ヴィジュアル系とメタルの狭間を行ったり来たりしているような雑種オタクたち(褒めてます)からも「ヴィジュアル系っぽさを感じる」と異様なほどプッシュされていたこのアルバム。
私はといえば年々ヴィジュアル系にばかり傾倒していき、比較的近しい音楽性のバンドだとConvergeやAnaal Nathrakhをチョロっと聴いた程度のもの。そういえば去年の今頃Anal Cuntのコピバンやらされたのは何だったんだろう…
以下、ヴィジュアル系のオタクをやってるだけのズブの素人のこじつけレビューとなりますので界隈に厳しいオタクの方はそっとブラウザバッグしていただけるとありがたいです。
無茶苦茶言ってますが貶す意図は全くなく、純粋にジャンルを超えた共通項の妙を楽しむという意図をご理解ください。
土着的に歌い上げ咆哮するボーカルと、シンプルかつ叙情的でありながら時としてトレモロリフを雨あられと降らせるギター。そしてこれがグラインドコアだと主張せんばかりに所構わずブラストするリズム隊。
これらが渾然一体となった音像が、こんなにも相性の良いものだとは。
愛と片付けてしまうのはあまりにも生易しく、愛と呼ぶにはあまりにも痛切。
言葉が聴き取れるほどに歌い上げるボーカルからは、一人の男の純粋さすら感じさせる足掻きが感じられる。
全体像でいえば、「ヴィジュアル系っぽい」と評されるのも同意できる。
「ヴィジュアル系っぽさ」自体曖昧模糊とした概念だが、グラインドコアバンドとして表現を突き詰めた結果(本人たちは意図していないとはいえ)このように感じられるのは不思議としか言えない。
ギターリフをバックに月日時間の語りから始まる「愛のうた」に代表されるように、一種のポエトリーリーディングのごとく多用される語りには確かに「らしさ」がある。「影」のイントロにどうしてもCREATURE CREATUREを感じてしまいますね…
個人的な感想としては「御三家(ムック・メリー・蜉蝣)がやってたとしても違和感はない」というのが正直なところ。
曲構成・歌詞ともに、グラインドコアとゼロ年代前半のヴィジュアル系を掛け合わせた趣がある。
グラインドコアというと攻撃衝動を外部に向けるというのが一般的なイメージだが(先述の通り詳しくないのであくまでイメージです。すみません)、「こわれはじめる」においては内に向いたものを感じる。それこそ、初期のムックのあの感じを思い出して頂けるとかなり近いのではないだろうか。
結論。
私の中でこのアルバムは、deadmanのかの名盤「in the direction of sunrise and night light」と対になる立ち位置のアルバムだ。
ときに雨のように、嵐のように、そして星のように降り注ぐ感情の奔流のなかで光を探し向かう。
不定形な自分の形をなんとか保ちながら。
感情の奔流の中で全てを受け入れ、静かに笑うか、あるいは内へ内へと攻撃衝動を爆発させるか。
二者の間にはそれほどの違いしかなく、逆にいえばそれほど近しい存在であるといえる。
聴くものに容赦無く殴りかかり、丸裸にしてしまう音の洪水。
どこかキャッチーさやポップささえ感じさせるこのアルバムをリスナーが無理くりカテゴライズすることなど、それこそ野暮というものだろう。
言い換えると、どのジャンルのリスナーにも届く可能性を秘めている。
2018年にこの音源を手にすることができるのはもはや奇跡だ。
まずは感じるまま、SWARRRMという荒ぶる魂に触れてみてほしい。
池袋手刀でSWARRRMがgibkiy gibkiy gibkiyと対バンしてるのを観たいです